2012年1月31日火曜日

むっつり異聞



其の頃の東亜キネマの看板は 団徳麿だった
一寸法師や せむし男等のメークアップもので売って居た
此方は白塗りの二枚目 勝負出来ない そこで
新しいキャラを考えた バスターキートン手本に
むっつり右門 アバ敬村上敬四郎

右門が考える時はアゴに人指し指を立てる
此れは南部慎一郎と云う京都の映画記者
撮影所の門に
南部狂一郎 右の者 出入りを禁ず
と書かれても
何だこんなもの 俺は左の者だと入って来る
無政府主義者 所長だろとスターだろと会釈無し

此れが撮影を見に来て フームと指をアゴにやる
此れを横目で見て戴いた
只のチャンバラ時代劇には無かったキャラを造り上げた

東亜キネマでシリーズ化して四本撮った
アバ敬が尾上紋弥 原作では村上と云う苗字が無い
いくら同心でも苗字が無いのはおかしい
尾上紋弥の苗字が村上だったので 其れを付けた
おしゃべり伝六は頭山桂之助
配役を変えずに同じメンバーで
役者の息がピタリと合うのがいい
脇役は喜劇の息でいかないと 右門がむっつりでいられない

山中の脚本は此処をしっかり押さえて巧みで在った
役者の色に合わせて脚本を書ける作家
此れが一番

東亜でのむっつり右門は四作
一番手柄・六番手柄・十番手柄・十六番手柄
十六番手柄で 原作に無いちょんぎれの松と云う脇キャラを出す
此れは沢田と云う撮影所の散髪屋
此れを掴まえて役を付けた

山中の口癖がちょんぎれちょんぎれ
ちょんぎれちょんぎれと云い乍 脚本を書く
ストーリーもちょんぎれ フィルムもちょんぎれ
床屋だから ちょんぎれちょんぎれ

脚本を書く前に 山中が皆を集める
アイディア出せ 扮装も銘々考えろ
山中は天性のユーモリスト
包容力の在る大きな人間だった
山中と二人で右門のキャラを造った


むっつり右門は佐々木味津三の小説 右門捕物帳が原作 天下無双の黙り虫で美男で独身 世の中何が面白いんだと 日がな一日 出世不用と寝そべって暮らして居るが 一旦立てば才気縦横 疾風迅雷の如く謎を解く 剣と柔術の達人 岡っ引きのおしゃべり伝六を手下に難事件を次々に解決する アバ敬はアバタの敬四郎 右門のライバル同心 何時も右門に手柄を取られる
佐々木味津三:愛知県出身 明治大学政経科卒業 純文学を志して居たが 父親の借金の為に経済的環境が厳しく 又家の負債を返す必要が生じた為に大衆小説に転向 右門捕物帖・旗本退屈男等 江戸時代を舞台にした時代小説を発表し花形作家と成った





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