東京に出て初恋をする
相手は吉原の芸妓
吾妻橋の上で午後一時に待ち合わせして 駆け落ちしようと約束し 今戸に在った 叔父徳三郎の家を 少し早めに出た途端 関東大震災が襲う 何処をどう走ったか判らないが 吾妻橋に辿り着く(1) 女は居無い 火の手が迫る 歩いて横浜迄逃げた 避難トラックに乗って馬入川の鉄橋で降りて 歩いて三島迄行く(2) 東海道線に乗って京都へ(3 赤) 祖母に頼んで(4)三百圓借りてとんぼ返り 中央線に乗って 客車には乗れ無かったので 機関車の突っ先に後ろ手に掴まって 二日掛かりで新宿に着く(3 青)
女には品川に旦那が居て義理の父親と称して居る 其の旦那に金を放り出して女の働いて居た 久野屋と云う店に行くが(5) 店前に看板が立って居て 女は実家の福井に戻って居ると出て居た
汽車に乗って福井へ(3 黄) 田舎道を必死で歩いて 明朝3時に実家を捜し当てた 家の戸をドンドン叩いたら母親が顔を出したので 事情を説明し様とすると皆迄云わさず 娘は居ないから諦めてくれと云う
貧しい百姓家だったので 又何処かに身売りしたのだと思ったので在った
燃える吾妻橋と震災前の吾妻橋 |
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